蓼食う虫-106

奇をてらわず
 
絶妙な加減
 
 最近のミュージアムは 保存や修理・貸し出しなどの都合で 偽物を展示しているところが多いのですが 偽物しかないことを売りにして 入場料は高額なのに 観光客が多いという珍しい美術館が有ります。
 竜宮城かと思う趣味の悪い迎賓館と ばかでかい茶室のある 大塚製薬社長の別荘地のそばにある大塚国際美術館は システィーナ礼拝堂に代表される実物大展示と 間近でさわれる 陶版による複製名画で親しまれていますが 西洋美術史の変遷とキリスト教の精神史を見るには最適の場所です
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アサリのシャブシャブ
  通りがかりに 漁協が直営する道の駅で 白アサリなるものを見ては 黙って通り過ぎることなぞできません、濃いめの昆布だしに 塩・醤油をほんの少し加えた鍋でシャブシャブ、ちょっと口を開いたら   貝が煮えすぎないうちにいただきます。
 
 焼き貝の殻に残った汁を これが美味しいんだ などと言ってすするグルメ番組を見て あんなの塩辛くて食えるもんかと常々思っていたので ほどよい塩加減と火の通り具合を楽しめるシャブシャブにしました。 
 
 ヨーロッパでは 地中海を中心とした ミケーネ・エジプト・ギリシャで多様な表現が生まれましたが、300年にローマ帝国によってキリスト教が確立されると 博愛と奴隷制度という矛盾をかかえたまま 1000年にもわたる中世という暗黒史が始まります。
 文字通り 人を食いながら侵攻した十字軍によって アラビアの先進文明を取り込むチャンスが有りながら 本格的な脱皮はパックス・モンゴリカによる 紙と活字印刷の伝播に伴う宗教改革を待たねばならず、美術的な表現の自由化は 同じく伝来した火薬とコンパスにより略奪した豊かさと  価値観の多様化を許容する社会の成熟、そしてターナーを必要としました。
 この後 パリ万博を契機として 日本が紹介されると 表現に革命が起こりましたがモネ・ゴッホピカソを経た今 これから何をどうして良いのか判らない画家達の悲鳴が聞こえ、一方 西洋の影響を受けた日本では 墨絵の原点を忘れ 塗り重ねた絵の具の塊と化し 大観・観山・春草の 一本の線にさえ宿る技術の確かさと 透き通る感性は何処へやら。 
  目的は美術館でしたが 今回も感動したのは食い気
                呻吟する天才達を横目に 沸騰する鍋を見つめて 
                                              凡人であることの幸せを満喫中