みちくさ-9

仏教史
 

心の静寂を見つける試み

 

 大雑把言って2500年前というのは 世界が食うに困らない程度に安定し 思考が自立を始めた時期に見える 人類の思考の画期だと言って良さそうな気がします、例えば、中国では孔子、インドではブッダギリシャではソクラテス、そして旧約聖書の成立など この時代以降 文字に残された思考は今に受け継がれて 哲学の重要な部分を締めているのです。

 言葉は人類そのものです 体力的に斯くも劣るホモサピエンス・サピエンスが 過酷な自然や屈強なネアンデルタール人に対抗して生き残ったのは 言葉によりイメージを共有する能力を最大限に発揮した結果 集団としての種族維持に成功してきたからにほかなりません、そして思考は言葉を媒介として成長し 集団の遺産として継承されて来ました。

 こうして継承された思想の中に 私にとって とても判りにくかった仏教があります、仏教のわかりにくさは 多民族国家故に規格化の進んだローマによって制定されたキリスト教のカノンとは異なり 釈迦が臨終の遺言で自燈明・法灯明を掲げ 各自研鑽せよと言い残したことにあるのと 後に記された思想がインド的印象表現によっているため 何が言いたかったのかを知るためには 原典の他に思想史として全体を捉える必要があるためです。 

 本来の仏教は 多くの神様にご利益を願うものではなく 個人が心の静寂たる悟りを得ることを目的として修行することで 悟りの本質こそ問い詰められるべきものなのですが 仏教史を見ると 悟りへ導くための手段として あらゆる試みを行い 分化・融合を重ね 地域に根づいてきた結果 本質をわからなくしている部分があります。

 釈迦の主張は明快に言い尽くされていますが これを人格にまで高めなければ悟りに至ったと言えないところに困難さがあるようで、江戸時代に盤珪という方が 死ぬ寸前迄突き詰めた修行で悟った奥義を「一切は不生で整う」 「わかってみれば簡単なことよ。」 と おっしゃっていますが 「下手に学問をした者には喉を通りにくいようで むしろ そこいらのお百姓さん達のほうが ストンと受け入れてくれる。」 とも おっしゃっていますが 苦しい修行をやめた弟子の中から偉大な後継者が出たという話も聞きませんから 修業を忘れた僧は知識と悟りの違いも区別できず 法事の格式を受け継ぐだけの唯の職業、 ましてや 我々が現代の雑踏の中で心の静寂を得るのは 至難の極みに見受けます。 

 アマゾンにピダハンという少数民族がいます この民族には区別を表す言葉が存在せず 過去や未来を表す言葉もないため 彼らには 今・この瞬間しか存在していません、このため 過去に後悔することも未来を心配をすることもなく、現在だけをありのままに受け入れて、常にリラックスした状態で生活をしているというのです。

 伝道師であったダニエル・エヴェレットは 彼らと生活しながら暮らしていましたが 今しかない彼らには 神を必要とする要素自体が存在せず 彼らが宗教などなくても既に幸せだということに気がつき 信仰していたキリスト教を捨て、彼らの存在の秘密が言葉にあると観て 言語学者になってしまいました。

 同級生にケアマネージャーがいますが 時々話を聞くに、 引きこもりも 家庭内暴力も 鬱も お互いの主語が「私」しかないことに気が付きます、 自分の子供の成長を見守っていると 教育環境が人として育てていくのであって 人は生まれながら人であるわけではなく 人になる要素を持って生まれて来るんだと思うことがあります、 例えば 生まれてすぐ狼に育てられた子供は ある成長時期を過ぎると 不可逆的に人としての共同生活を送ることができなくなることが報告されていますが これらことがらから 私には絶対的な個人の人格という存在を見出すことはできず ここに 空と如に帰結した釈迦の思想が改めて価値を持つことになりました。

 現代物理学が説明する空間の構成には 個人の情報だけがキープされる場所は計測されていません、もし神が全能で この宇宙を総べる存在であれば その膨大な情報量は大きなエネルギーとして保存されていなければなりませんが それも見いだされていません、それなら 私達は何なのかと問いかけられれば 個人であり 存在の一部であり 存在そのものであり この世界の進化そのものと答えるのがやっとのこと、しかしながら 少なくとも 現在の空間と物質はDNAを作るために調和しており 人類が最も複雑な構成の先頭付近に居ることは間違いなさそうです。

 ともあれ 心の静寂を求めた仏教が 世界の構成を空と覚え その一瞬を如と捉えた達観は 発達した現代科学でも超えることのできない 不動の地位を保っていることに変わりはないでしょう。

 

   仏教史を これ以上小さくできないほどにまとめてみました、

    これに一言を加えると 急に膨大になり手に負えなくなりそうなので 作業を中断しています。

 

   仏教を紐解くときの資料として使っていただければ幸いです。

 

 
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 (18.09.04 修正   A-4 2ページ )
 
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